2009年6月15日月曜日

最相葉月「絶対音感」

「絶対音感とは特定の音の高さを認識し、音名というラベルを貼ることのできる能力であり、音楽創造を支える絶対の音感ではない。だが、それがさまざまな能力と複雑に絡み合い、優れた表現として賞賛された結果、初めて才能を支える一つの道具として浮かび上がるのではないだろうか。」

絶対音感とは何か、その疑問を科学的、歴史的に追い、そして絶対音感を持った人間、持たなかった人間がどのような人生を送っているのかを調べた本。音楽や絶対音感、そして感覚というものをいかにして科学がとらえようとしているのかを紹介している。また、日本に絶対音感の教育制度がどのように持ち込まれ発展し、現在の日本人音楽家に現れた弊害まで示している。音楽家からは、絶対音感についてどのように感じているかを聞き出している。
文庫本で400ページ以上である。この取材量はすごい。文章が上手いので、その量でも一気に読める。

追記:
私は昔から疑問があった。ラの音が440ヘルツと言われているが、実数上で一つだけ実数を選んだとき、有理数を選ぶ確率はルベーグ積分で0である。つまり、440ヘルツぴったりの音を出すことは不可能である。440ヘルツの多少の誤差を入れているならば絶対ではないと感じていた。
この本によれば、人間の感覚はそこまで鋭敏ではなく、500ヘルツくらいの周波数域では聴き分けられる音の差は1ヘルツ弱だそうだ。長年の疑問が解消した。

評価:☆☆☆
(1-5で基本は2)

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