2010年5月29日土曜日

2010年5月22日土曜日

青木峰郎「ふつうのコンパイラをつくろう」

 Javaで書くC♭(C言語のサブセット)のコンパイラをつくる本.よく理解している人が説明すると,とてもわかりやすい.
 約650ページを読みきると,やっぱり達成感があるね.

評価:☆☆☆☆
(1-5で基本は2)

2010年5月21日金曜日

数字も文化に影響される

 「99.9%」と言われると,ほぼ確実である気がする.百分率での表示ではなく「0.999」と書いてみよう.さて,これが10進法ではなく,16進法であったならば,「9/16 + 9/(16×16) + 9/(16×16×16)」なので0.59985(小数点第6位を四捨五入)なので起こらないこともまあまあある気がする.
 数字は客観的であると言ったところで,所詮記数法を共有している同士でしか共有できないのだ.

2010年5月20日木曜日

本川達雄「ゾウの時間 ネズミの時間」

「生物学により、はじめてヒトという生き物を相対化して、ヒトの自然の中での位置を知ることができる。」

 「時間は体重の1/4乗に比例する。」
 これ以外にも,行動圏,捕食方法,呼吸系や循環系など,生物のサイズが生物の特徴づけにどのように影響しているのかを丁寧に説明していく.
 様々なデータを見る,仮説を考える,仮説を証明するためにデータを取る,仮説が証明されたかを考察する,という非常に科学的な過程を経ていく.まだ証明されていないことには,「~と私は思う」とつけることで,科学的事実ではないことをきちんとつけている.そして,科学的事実から人間の生活について思いをめぐらす.
 科学者の鑑のような誠実な態度である.一流の科学者が書いた一流の科学新書である.

評価:☆☆☆☆
(1-5で基本は2)

2010年5月19日水曜日

博士事情

 生命科学をやっている友人から,最近の話を聞く.
 最先端の科学をやっていると他人が理解できないことはよくあることなので,自分の能力の高さを見せるには,同業者の評価を専門外の人に見せることは必要である.その為に使えるのは,修士,博士を普通よりも早く取ることである.また,学会などで賞をもらうことも有効である.
 彼はできる科学者である.いつか面白いと思うことがなくなってしまうときに研究職だったら研究を辞められないがそのときはどうするのかと尋ねたら,そういう不安もあるとのことだった.しかし,知りたいことが多くてずっとやっていくのだろうとも私は感じた.
 博士に行く人は何か知りたいことがある人だと私は思っていた.しかし,彼は違うと言う.一体何のために博士に来ているのか彼には理解できない人が多い.彼も私も,就職できないから博士に行くというのは間違っていると思う.博士論文公聴会でもひどいものが多いそうだ.学部生の授業のTAをやっていても,自分の研究室に来てほしいのは数人いればいいほうらしい.

2010年5月18日火曜日

相田洋「新・電子立国〈3〉世界を変えた実用ソフト」

 コンピュータにはソフトウェアがいる.誰もコンピュータがほしいのではない,コンピュータの中に入っているソフトを使いたいのだ.
 この本では初期の表計算ソフト「ビジカルク」の開発,それを超えた「ロータス1-2-3」,日本語ワープロ「一太郎」,日本語変換システム「ATOK」,日本で表計算ソフトがいかにして使われているかという実例,が紹介されている.
 コンピュータは人間味がないという人がいる.でも,コンピュータは人を幸せにするために人が情熱を持ってつくったものである.やはり,技術者はやりがいのある仕事である.

評価:☆☆☆
(1-5で基本は2)

2010年5月17日月曜日

爆笑問題「爆笑問題集」

「少年達は、“表現する”ということを甘く見ているために、何も伝えられずにいる。」

 TV Bros.に連載されていた爆笑問題のコラムのまとめである.テーマは,社会問題,芸,思い出,嘘話,小説風の話,読んだ本,など幅広い.
 上記引用は,少年達が事件を起こすことについての小論である.爆笑問題(もしくは太田)は漫才師として表現することを深く考えてきた.表現とは考えて考え抜かないと伝わらないという思想が彼の中にある.
 太田はステージ上で動物を殺すことを刺激的な表現だとするアーティストに対し,観客の衝撃は動物の死に対してであり,アーティストの表現力に対してではないと言う.一方,ピカソのような「圧倒的な表現というのは,見ている側に,自分も何か創造出来るのではないか,という感覚を与える」のだ.
 太田は社会を斜めに見ているのではなく,むしろまっすぐ見ているからこそ他の人と違うものが見えるのかもしれない.

評価:☆☆☆☆
(1-5で基本は2)

2010年5月16日日曜日

Ph.D言語

 世の中グローバル化が進んで,文化の多様性が失われて,世界中で言語が消滅しつつあるらしい.
 さて,プログラミング言語も言語である.こちらは増えているが,広まっていないものも数多くある.情報系の博士コースの院生が自分の考えた言語を実装してみたというものがPh.D言語である.多くのPh.D言語はPh.D取得のために実装され,Ph.D取得後は何のメンテナンスもされずにほったらかしにされる.
 ポアンカレ(吉田洋一訳)「科学の方法」には「社会学の学位論文が出るたびに新しい方法が提出され、しかもその論文を書いた新ドクトルはひらすらその方法を用いざらんとこれを努める。したがって、社会学はその有する方法の数はもっとも多く、その挙げ得る結果はもっとも少ないという科学である。」(旧字体は新字体に直した)とある。数学をやっていた人間としては,社会学は積み重ねがない学問なのかと思っていたが,ソフトウェア科学の分野も大差がないことがわかってきた.

2010年5月15日土曜日

間違った論理

(2010年5月22日:間違いを修正)
 あるサイトで以下のように書いてあった.

(引用始まり)
----------------------------------------------
AはBである
 ↓
BはCである
 ↓
よってAはCである
----------------------------------------------
(引用終わり)

 これは論理的に間違っている.上記引用を,前後文脈を参考しながら書き直せば,「{(A->B)->(B->C)} -> (A->C)」であった.(中括弧ではなく小括弧を使うべきだが,見易くするために中括弧を用いた.)これでは,Aが真,Bが偽,Cが偽のときには全体として偽になる.
 正しい三段論法は「{(A->B)∧(B->C)} -> (A->C)」である.
 
 また,「AならばB」から「AでないならばBでない」を導いていた.これも間違いである.

2010年5月12日水曜日

武谷三男編「安全性の考え方」

「公害と同様に、企業活動では絶対に避けられないものであって、資本による最大限利潤の追求は、従業員の生命・身体・健康をまったく犠牲にしているのが実状である。」

 公害が大きな社会問題となっていた1967年に発行された本である。水俣病、四日市喘息、白ろう病、原子力、薬害などが取り上げられている。
 昔の本なので、現在の感覚とは異なるところがある。「~実状である。」と強く主張しているが、現在の製造業では「まったくの犠牲」とはなっていない。
 上記引用は熊倉武の第12章「法律の限界」からである。この章は非常に根拠の不明確な断定的な記述が多く、法学者の議論は客観的ではないのかという疑念を持たざるを得ない。
 また、武谷三男の最終第13章「安全性の哲学」もひどいものである。本当に科学者なのであろうかとも思うほどの、主観的な記述が多すぎる。また、「途方もなく」という印象的な記述を用いる。科学的に数値を出してほしいものである。
 私がもっとも嫌悪感を抱いた部分がある。武谷は、政府や企業の経済至上主義が安全を脅かしていると主張している。そのように述べておきながら、「YS11が外国に売れる前に日本で事故が起こったのは不幸中の幸いである。外国で起こったとしたら、それこそ日本の評価はかたなしになっただろう。」とも述べている。評価によって飛行機が売れる売れないことよりも、人の命に関係する安全性の方が大事なのではないか?まったく論旨が一貫していない。
 呆れ果てた。

評価:☆
(1-5で基本は2)

2010年5月11日火曜日

形容詞

「比較対象を必要としない形容詞はあるか?」という疑問を持ってから、一つも発見できていない。

2010年5月10日月曜日

森健一、鶴島克明、伊丹敬之「MOTの達人 現場から技術経営を語る」

「コンセプトを作るときは、技術の言葉で語らない。」

 東芝の日本語ワープロ発明者、ソニーのCD開発プロジェクトリーダー、そして経営学者のMOTについての対談集。森健一氏によれば、MOTとは「Management of Theme」、つまり研究テーマのマネジメントのことのそうだ。研究テーマは研究者の内在的なエネルギーで発展しなくてはならず、上司、研究所長、CTOは研究テーマを与えるだけではいけない。
 研究テーマの組織レベルでのマネジメントは私の現在の仕事ではない。しかし、いかにして研究テーマをつくっていくかというのは私が取り組んでいることである。自分の研究計画書にも、コンセプトを書いたりと、完全に私は森健一氏に影響されている。
 この本の感想を上司に言ったら、この人は部署に何十冊も配ったことがあるそうだ。企業研究所の人間は読むべき本である。

評価:☆☆☆☆
(1-5で基本は2)

2010年5月9日日曜日

オールコット作、矢川澄子訳「若草物語」

 父が南北戦争に従軍牧師として行ってしまったため、母と共に生きる4姉妹の物語。愛に包まれた話で、読んでいて幸せを感じてくる。
 実は4部作だったと始めて知った。続きも読みたいな。

評価:☆☆☆☆
(1-5で基本は2)