「格差問題の是非を論じるときは、経済学が合理的かつ科学的に分析して、実態を判断する際の客観的な資料を提供できます。しかし、人々の価値判断にも依存するところも少なくありません。」
筆者の結論としては、高齢者と若者の貧困は増加している、とのこと。
私は興味を持ったのは上記の経済学へのとらえ方である。これはまさに、現代の科学者の仕事である。現在はトランス・サイエンスの時代である。つまり、小林傳司のいう「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできな問題群からなる領域」である。(「小林傳司「トランス・サイエンスの時代」」)その際、「科学者は社会や政治と切り離され、自らが生み出した客観的で中立的な知識を、知識として意思決定の世界、つまり政治に差し出」さなくてはいけない。
そもそも経済学者は貧困と分配問題を解決したいという欲求で研究を行っていることが多いそうである。(宇沢弘文「経済学の考え方」)そして、本文の最後では筆者は「私が示したような実態や考察を参考に、日本にとってふさわしい選択肢を、国民に選んでもらいたいと私は希望します。」といっている。あくまで、学者は自分で調べた結果を提出するのみであり、決定は国民が行うものであると考えている。
この流れの中では、国民一人ひとりがどのような社会をつくっていきたいのかを考えていかなくてはいけないが、それは今までやってこなかったという観点で言えば、なかなか大変なことである。
追記:
若者が企業を目指して、大企業に人が集まらなくなると、日本経済の中核部分の企業に「翳り」が見られて、また、開業医が増えると大病院の人材が育たないと日本の医療水準が低下するという懸念を持っているようだが、本当かなあ?
評価:☆☆
(1-5で基本は2)
2009年5月30日土曜日
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