2007年11月7日水曜日

理学と工学の違い

私は理学研究科に属している。昔の科学哲学では「数学は科学か?」という議論をしていたくらいなので、理学部全体の雰囲気について発言を求められても正直なところ答えたくないのだが、一般概念として答える。文系の人がイメージしにくいものとして、理学と工学の違いが挙げられる。両方とも「理系」に属している。

「理学は真理の追究を求めており、そこの中だけで価値が閉じている。工学は製品になることが大事と考えている。」

一般にはこの説明で間違いはないと思う。
ただ、最近はちょっとずつ変わってきている。理学でも化学の人の中には製品になるかどうかを考えている人もいて、工学だっていい製品をつくるためにものごとの原理を調べている人がいる。
つまり、私の説明は過去のイメージを引きづった発言であり、この後の注釈をわかってくれないと現状が伝わらない。しかし、初めて私の話を聞いた人は注釈まで注意がまわらないだろう。
私は現状を知っておきながら、悪いイメージの再生産を行っている。「悪い」というのは、この区分が悪いというのではなく、変わろうとしている人たちを部外者が過去の解釈を続けるためだけに抑えつけるという意味である。
もっと広く言うと、私は理学や理系の中では数学科代表、理系以外の中では数学科もしくは理系代表になってしまうのだから、発言する際は私がイメージをつくってしまう力を持ってしまっているという意識を常に持っていなくてはいけない、ということである。学問形式(ディシプリン)によって思考様式、価値観が形成されるのは否定できない。

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