朝日新聞、日経新聞に書かれた2008年の予想がどれだけ当たったのかを検証する。
まず、朝日新聞2008年1月5日から。
岩沢誠一郎 野村證券チーフストラテジスト
日経平均株価 13500~18000円
対ドル円相場 昨年末より円高傾向の推移
「サブプライム問題の解決への道筋は見えてきた。企業業績は市場の見方ほど悪くない。急激な円高が進めば利下げもあり得る」
大外れ。「急激な円高が進めば」というが、進むかどうかを予想するのが仕事なのでは?
加藤出 東短リサーチチーフエコノミスト
日経平均株価 13800~17200円
対ドル円相場 102~115円
「春先に米経済への悲観論がピークになっても長くは続かず、年末には株価は上昇。一時的には円高が進んでも積極的な円買い材料はない」
確かに12月は株価は上昇したが、予想株価にはちっとも追いつかず。
西広市 日興コーディアル証券エクイティ部部長
日経平均株価 14000~18500円
対ドル円相場 105~120円
「米経済は年前半は減速するが、後半持ち直す。米金融機関の資本増強策がポイント。日本株には政府系ファンドなど新たな買い手も」
持ち直していません。
平川昇二 UBS証券チーフストラテジスト
日経平均株価 14000~20000円
対ドル円相場 105~120円
「海外投資家から見て、日本株は様々な投資指標で割安な水準となった。欧米で利下げが進んでいることも株価押し上げの要因になる」
14000円を超えたのは、7月以降はありません。
増井英彦 日本総合研究所チーフエコノミスト
日経平均株価 14000~16000円
対ドル円相場 100~110円
「米金融機関の追加損失が表面化し、米景気が一段と減速する可能性も。国内では建設不況が深刻で、賃金や新卒採用への波及を懸念。」
賃金と新卒採用は話題になった。でも、相場予想は外れ。
藤戸則弘 三菱UFJ証券投資情報部長
日経平均株価 14000~18000円
対ドル円相場 105~118円
「サブプライム問題は1~3月が最悪期。米金融機関の損失の全容が見えれば年後半にかけて株価は回復へ。海外投資家は政局も注視」
最後は予想でも何でもない。損失の全容は見えたのか?見えたとしても年後半以降は株価低迷の一途。
三宅一弘 大和証券チーフストラテジスト
日経平均株価 14000~19500円
対ドル円相場 105~115円
サブプライム問題は当初の予想より深刻化しているが、1~3月期には市場への織り込みが進み、株価は底入れする可能性がある」
可能性はいつでもあるから、そんな予想をしても何の価値も無い。なお、1~3月期は局所的には底入れである。
まとめると、ちっとも当たっていない。
日経新聞2008年1月5日朝刊から。
国井保博 第一生命保険株式部国内株式グループ次長
「年末に一万八〇〇〇円程度まで上昇しそうだ」
この人は「為替が○○円ならば」という予想を多くしているが、そこが大事なのでは?
キャシー・松井 ゴールドマン・サックス証券チーフ日本株ストラテジスト
「上値は年末に一万七〇〇〇円程度とみている」
この人のせいでゴールドマン・サックスは上場以来初の赤字であろうか?
山野井徹 大和証券投資信託委託チーフ・ファンドマネージャー
「今年前半に日経平均株価で一万八五〇〇円を上回る場面があると予想する。」
「年後半に世界経済の減速を警戒する場面があれば株価の下押しがありそうだ」
2つ目は当たり前である。
日経新聞2008年1月3日では「経営者・有識者」が株価と景気について予想している。日本の有名企業の社長でも株価はちっとも当たっていない。社長らしく多少強めで予想しているのだろうが、それでも大外れ。有望5銘柄は1位がコマツ、2位がトヨタだが、今年2009年予想ではトヨタは1人だけ。地球環境なんて1年前からそんなに変わっていないのに、金融がガタガタになっただけで有望ではなくなってしまった。そんなことはないだろう。
世界的な株価下落は2007年7月末から始まり、その原因がサブプライムローンだとされている。2008年9月にリーマンショックがあったにしろ、景気悪化の火種は2008年予想をした段階では知られていた。それでも大外れをするアナリストと呼ばれるみなさん。製造業でこんな予想違いをして事件が起こったら、企業存続が危うい。
予想屋とは気楽な商売なのかしらん?
2009年1月4日日曜日
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今回の金融危機は、「百年に1度」のですから、普通の予測家が言い当てるのは、無理でしょう。
返信削除そうでなくとも、ほとんどの新聞に載っている年初の予測は、毎年はずれていますが!
まじめな話、今回の急激な円高と株の下落は、ほとんどの人が9月になっても予想だにしていませんでした。ちなみに、僕の9月のブログに当時の米国政府の呑気な対応を書いています。
トヨタでさえ、その販売計画を修正したのは10月に入ってからですし、その営業利益見通しを赤字に大幅修正したのは11月になってからです。
http://blog.zaq.ne.jp/ai-risk/article/33/
恐ろしいことに、最近の論調では、「これから回復する経済の姿は、急落以前の姿に戻るのではなく、まったく別な形になる」といわれていることです。新しい、モデルを打ち立てない限り、回復はないということなのでしょうか???
100年に一度だったら、外れてもしょうがないというのにずるさを感じます。製造業で100年に一度という事故が起きたら、企業の存続の危機です。経済予測はあくまで予測であって、それをもとに行動して失敗したら行動した人の責任という意見があります。製造業では使用方法の通り扱い事故が起きたら間違いなく企業の責任です。生命に関わるかどうかという違いを理由にする人がいます。しかし、半導体増産体制を敷いたのに世界同時不況でデジタルプロダクトの需要が激減し、結果としてソニーや東芝は悔しくも人員削減に踏み切りました。経済予測は多くの人の生活に影響を及ぼします。科学技術よりも経済学が予想は難しいから外れてもしょうがないという意見もあります。難しいのは確かです。我々は予想が精密化していく過程の中にいて、徐々に精緻化していくのを見守る態度でいることが妥当かもしれません。ただ、株価予想は大体強気です。株を買わせるためだろうと思っていましたが、週刊文春で楽天証券の人が正にその通りのことを述べていました。データに対する解釈から価値観を排除することは難しいにしろ、科学的データは客観的に取られなければならないという基本原則を考えると、株価予想は科学ではありません。景気がよくなればいい、株を買うことで社会に金が回るようになればみんなが幸せなのだから多少法螺を吹いてもいいではないか、という反論には賛成しかねます。
返信削除いろいろ述べていますが、経済学に株価予測をしろというのが無理な注文であると思えてきました。アダム・スミスの頃は、あくまでどのような社会をつくるのかを述べていました。今読んでいる本を読み終えたら、もう少しまとめてみます。経済学とは何なのかを自然科学が辿っている道と比較しながら。
返信削除オランダのように職務給制度を進めて、正規・非正規の賃金差を小さくし、ワークシェアリングを行うのでしょうか?共産党に入党する人が増えているそうです。人間は大変な状態になると冷静な判断をできなくなるようです。「まったく別な形」という表現をしておけばどうなっても予想が当たったと言い張れそうです。